前回はアクセレレーション期での不良姿勢とその改善についてご紹介させていただきました(https://js-sportsbody.jp/10436/)。今回は フォロースルー期 での起こりやすい不良姿勢とその改善策についてご紹介していきます。
フォロースルー期 に起こりやすい不良姿勢
フォロースルー期:(図1)
ボールリリースに導いた投球腕の負担を吸収するため急激な減速が行われるフェーズであす。一見関節にかかる負担が少ないように思われがちであるが、減速のための協調された運動が破綻すると種々の障害を招くことがあります。アクセレレーション期でボールを140kmまで加速させられたとすれば、急加速した腕に対して今度は急ブレーキを掛ける必要がある為、そのことを踏まえるとそれ相応の負荷が掛かることが予想できると思います。
図1:フォロースルー期
ボールリリースから投球則の腕のスピードがゼロになるまで
フォロースルー期 に起こりやすい不良姿勢
アクセレレーション期に急速に速度の上がった投球腕はボールリリース後、牽引されながら振り下ろされます。その為、腕を減速させなければ肩関節から抜けてしまいます。ここで腕を減速させるために重要なのはフォロースルー期での腕の移動距離です。
例えば、100kmで走る車がブレーキをかける際、10mで止まるのと5mで止まるのでは、どちらがブレーキに負担が掛かるか?もちろん5mで止まる方がブレーキに負担が掛かかると思います。これは投球のフォロースルーでも同じことが言えます。
フォロースルーの距離が短い投手では長い投手に比べより急ブレーキを掛ける必要が出てきます(図2・3)。
図2の様にフォロースルーの距離を長く獲得できるフォームに比べ図3の様にフォロースルーの距離が短くなってしまうと、ブレーキをかける際に働く肩後面(棘下筋・小円筋・三角筋後部線維等)や前腕外側(上腕二頭筋・腕橈骨筋・橈側手根伸筋等)の筋肉により大きな負荷が掛かり、筋肉の硬さを発生させます(図4・5)。結果として、肩関節・肘関節の可動域制限に繋がり、アーリーコッキング期からアクセレレーション期での肘下がり等に繋がり、痛みの誘発に繋がってしまいます(メカニズムは割愛)。
図4:肩関節後面の筋肉
図5:前腕外側の筋肉
フォロースルー期 に不良姿勢が起こる要因
フォロースルー期の不良姿勢の多くはステップ側股関節の可動域制限や、体幹の回旋制限によりフォロースルーの距離をとれなくなることがあります。ステップ側の股関節の可動域制限により、重心を左脚に十分に移すことができなかったり、体幹の回旋制限により腕の減速する為の距離を稼ぐことが出来なくなります。
フォロースルー期 の不良姿勢に対する機能改善
左股関節に乗せる運動(図6・7)
①右脚を持ち上げ左脚で片脚立ちをします。
②左脚で支えながら体幹を前傾させながら右脚を後ろに伸ばします。この際、図:の様に体幹と伸ばした右脚をまっすぐ保ち、
脚が内側に入ったり、骨盤が開いたりしないように注意してください。
③②の姿勢から、右手を下に、左手を上に引きながら体幹を回旋します。この際、背骨の軸で回旋することを意識します。
図7:図における不良姿勢
体幹の回旋可動域改善に対して(図8・9)
①両方の足の裏を右側に向けた横座りをします。右手を前方に付き骨盤を起します。
②骨盤を起した状態で右脚を後ろに引きます。この時、骨盤が後ろに倒れないように注意してください。
③体幹を左回旋させ両手を左膝の前方に移動します。
④右手を左脇の下に通し右肩を床につけるようにし、体幹の右側を伸ばします。この際、重心を左の股関節に移動することを意識し、図:の様に骨盤が後ろに倒れない様に注意してください。
図9:図におけるストレッチの不良姿勢
④の際に骨盤が後傾してしまうと左股関節に重心が乗らず、ストレッチ効果が軽減してしまう。
今回はフォロースルー期の姿勢についてお話しさせて頂きました。フォロースルー期は投球腕を減速させるために重要なフェーズであり、ブレーキを掛ける距離を長く保つことで筋肉や関節への負担を軽減させられますが、ステップ側股関節の可動域制限や、体幹の回旋制限によりフォロースルーの距離が短くなってしまう事でブレーキをかける筋肉に負荷がかかり、結果としてその筋肉の硬さを誘発し障害につながるリスクを挙げてしまいます。フォロースルー期はボールを投げた後の動きとなる為、軽視されることも多くありますが、このフェーズでの問題が結果として別のフェーズでの不良姿勢や痛みの発生を誘発してしまうので決して無視できない部分といえます。
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