投球フォームで見られる問題点〜 アーリーコッキング期 〜

 前回はワインドアップ期での不良姿勢とその改善についてご紹介させていただきました。今回は アーリーコッキング期 での起こりやすい不良姿勢とその改善策についてご紹介していきます。

アーリーコッキング期 に起こりやすい不良姿勢

アーリーコッキング期:図1

 このフェーズは蓄えたエネルギーを投球方向に捻り返しの運動エネルギーとして解放する。並進運動中心の動きとなり重心移動が一番大きいフェーズとなります。

図1:アーリーコッキング期
非投球側の手がボールを離れてから、前の足が地面に着地するまでの期間

 

 アーリーコッキング期の『割り』のタイミングで起こりやすい不良姿勢:図2

 アーリコッキング期、非投球側の手がボールから離れる動作を『割り』といいます。この割りのタイミングで起こりやすい不良姿勢として多いのは、骨盤が後傾(後ろに倒れる)してしまう姿勢です。骨盤が後傾する事で体幹を後ろに倒すか、背中を丸めて猫背になってしまいます。この姿勢になってしまうとバランスを取ろうとして両腕も後方へ引かれてしまいます。この姿勢を招く要因として考えられることが股関節の屈曲が浅く、膝関節屈曲優位な動作が原因となり、右股関節への『タメ』が作れない状況となります。
 良い姿勢の基準として軸脚の股関節が適度に屈曲し、軸脚のつま先のラインよりも膝は前方に出ないことが必要となります。

図2:『割り』の動作時に起こりやすい不良姿勢
良好な姿勢は軸脚の股関節と膝関節の屈曲が同等程度で体幹が軽度前傾を維持できている状態です。
不良姿勢になると、軸脚の膝関節屈曲が優位となり、膝がつま先よりも前に出てしまう。また、その姿勢でバランスを取るために体幹を後ろに倒すか、背中を丸めてバランスを取るようになってしまいます。

 アーリーコッキング期で起こりやすいステップ脚での不良姿勢

 またステップ脚に関しても不良姿勢の場合、軸脚から離れつま先が遠回りします(図3)。結果としてバランスを取ろうとして上半身の重心を後ろ方向へ反らしたり体幹を丸めるという代償が出現する状況となってしまいます。良い姿勢の基準としてステップ脚が軸脚の近くを通り、つま先がセカンド方向を向いていることが必要となります。

図3:アーリーコッキング期で起こりやすいステップ脚での不良姿勢
良好な姿勢はステップ脚が軸脚の近くを通り内旋(つま先がセカンド方向を向いていること)している状態です。
不良姿勢になると、ステップ脚が軸脚から離れ遠回りし外旋(つま先がホーム方向を向いていること)している状態です。この姿勢になると重心が後方へ偏ってしまいます。

 アーリーコッキング期でステップ脚を投球方向へ踏み出す際に起こりやすい不良姿勢としては上半身がホームベース側へ突っ込んだり、軸脚の膝が内側に折れてしまう現象も代表的な不良姿勢として挙げられます(図4)。上半身は突っ込んでしまうと身体の開きが早くなってしまったり、軸脚の膝が内側に折れてしまうことで軸脚での支えが減少し、以降の体重移動が上半身に依存する形となってしまします。

図4:ステップ脚を踏み出す際の姿勢上半身が突っ込んだり、軸脚の膝が内側に折れてしまう事がしばしば見られます。

 また、ステップ脚の地面への突き方に関してもつま先から接地する事で身体が後方へ倒れやすくなるという不良姿勢が見られますが、ステップ脚の接地の良い形は、踵もしくは足の裏全体が同時に接地することが良いとされています。つま先から接地する事でステップ脚が外旋(外側に捻れる事)し身体の開きを早くしてしまいますが、踵もしくは足の裏全体で接地する事でステップ脚が内旋(内側に捻れる事)し身体の開きを抑え『タメ』を作りやすくなります。

図5:ステップ脚の接地
良好な姿勢は踵もしくは足の裏全体で接地するが、不良姿勢はつま先から接地します。

アーリーコッキング期 に不良姿勢が起こる要因

 アーリーコッキング期の不良姿勢の多くは股関節の屈曲をうまく作れないことに原因が多くあります。股関節の屈曲がうまく作れない要素として、胸椎伸展不足(猫背)・足関節の可動域制限、スクワット動作での運動イメージの間違い等が挙げられます。また、軸脚の内転筋の筋力低下もアーリーコッキング期にタメが作れず上半身が突っ込んでしまう大きな原因となります。

不良姿勢に対する機能改善

スクワット動作

 不良姿勢の改善として、一つ目はスクワット動作をご紹介します。スポーツのトレーニングで頻繁に用いられるスクワット動作ですが、意外にしっかりとした姿勢で実施出来ていないケースが多くあります。スクワット動作での代表的な不良姿勢を下の写真に載せます(図6)。

図6:スクワット姿勢の例 
良い姿勢の例は股関節と膝関節が均等に屈曲し(曲がり)下腿と体幹が平行で膝がつま先の真上に位置します。
不良姿勢の代表例として股関節が屈曲が浅く、後方に重心が偏ってしまう為、膝をつま先よりも前に出すことでバランスを取ってしまいます。
また、重心を下げる際に背中が丸まり骨盤が後傾してしまうことで重心が後方に偏ってしまいます。
もう一つは骨盤を過度に前傾し体幹を前方に倒すことが挙げられます。

 スクワット動作での不良姿勢のほとんどは股関節の屈曲が適切に行うことができず、股関節の動きを代償する形で別の関節が過度に動いてしまうことが挙げられます。
そこでストレッチポールを使って股関節の屈曲を意識するトレーニングをご紹介します(図7)。

図7:ストレッチポールでのスクワット
つま先と膝の向きに注意して行いましょう

 ストレッチポール上でスクワットを行うと、不安定な状況となる為、重心を真下に下げられなければバランスを保てません。そのため、前後の重心バランスを保つために股関節の屈曲が起こりやすくなります。この運動の際に、つま先と膝が同じ方向を向いている様に意識します。
 バランスをとることが難しい場合は壁などを支えにしてください。くれぐれも転倒に注意してください!

片脚スクワット

 スクワットで股関節の屈曲が意識できたら片脚でのスクワットを行います(図:8・9)。この片脚スクワットは重心コントロールを行うために多くの不良姿勢が見られ、自身の癖が非常に分かりやすい運動になります。
良い姿勢は(図8)
・体幹と下腿(スネ)が平行
・膝がつま先よりも前に出ない
・骨盤を平行に保つ
・膝が内外側に入らない
・浮かせた脚を軸足に揃える

を意識してください。


図8:片脚スクワット
片脚で身体を支える為、身体のどこに問題があるか分かりやすいです。

不良姿勢としては(図9)

・浮かせた脚を前後に動かすことでバランスを取る
・軸脚の膝が内側に入る
・骨盤を水平に保てない⇨浮かせた側の骨盤が落ちる
・浮かせた脚を外側へ開く
・体幹を軸脚側へ倒す

等が挙げられます。


図9:片脚スクワットの不良姿勢
片脚スクワットはバランスを取るために不良姿勢が多くありあます。

 アーリーコッキング期は片脚で体重を支える期間となるので、片脚スクワットでしっかりバランスを取れないことがそのまま不良動作に繋がったり、片脚スクワットで見られる不良動作が、実際アーリーコッキング期の不良動作に現れていることが多くあるります。

股関節屈曲位での胸椎伸展運動

 股関節の屈曲が意識できたら、次に股関節を屈曲位で胸椎の伸展(胸を張る)を意識する運動をご紹介します。
スクワット姿勢でバランスボールを下から上へ持ち上げます(図10・11)。

図10:スクワット姿勢での胸椎伸展運動(横)
スクワット姿勢でバランスボールを両手で挟み、両肘を伸ばしたまま頭上(耳の後ろ)まで挙上します。この運動で肩甲骨の下側(矢印の部分)周辺に収縮感を感じます。
バランスボールを挙上した際に体幹が起き上がったり、背中が丸まり肩がすくんだりしないように注意してください。

図11:スクワット姿勢での胸椎伸展運動(正面)
スクワット姿勢でつま先と膝が同じ方向を向くように意識します。
膝が内側に倒れたり、バランスボールを挙上した際に、肘が曲がり脇が開いたりしないように注意しましょう。

 この運動では、背中の筋肉を鍛えられます。背中の筋肉を鍛えることで、股関節を屈曲した際に、体幹の前傾が維持で切るようにしましょう!

ゴムボールを使ったアーリーコッキング姿勢

 スクワット姿勢で胸椎の伸展が出来たら、ゴムボールを使ったアーリーコッキング姿勢を行います。
この運動ではステップ脚でゴムボールを踏みスクワット姿勢を作ります(図12)。スクワット姿勢が作れたら骨盤を水平に保ちながら体幹を右回旋(左投げの場合は左回旋)します。この際に、ステップ脚の膝が内側に折れたり左の骨盤が下がってしまうと軸足でプレートを踏み込めなくなりタメが出来なくなります。また、体幹の右回旋時体幹が左側に反ってしまうことも突っ込んでしまう原因となりますので注意してください!

図12:ゴムボールを使ったアーリーコッキング姿勢

レッドコードでのスクワット姿勢

 特殊なトレーニングとしてレッドコードを使用したトレーニングをご紹介します(図13)。
レッドコードとは天井から吊るされたロープを使用することでロープの不安定性をいかし不安定性をコントロールすることで筋肉に刺激を入れるトレーニングになります。
 両脚をレッドコードに乗せスクワットを行います。スクワット姿勢から両脚を均等に開いていきます。両脚を開脚した姿勢をキープし体幹を右回旋します。この運動では、骨盤が後傾したり背中が丸まったりして重心が後方へ偏ってしまったり、膝関節が内側に折れたりしてしまうとレッドコード上に立っていられなくなるので、不良姿勢がすぐに分かります。また、このトレーニングは開脚した脚をキープし続ける為、内転筋で体重を支えるため、アーリーコッキング期のトレーニングとしてとても関連するトレーニングとなっています。

図13:レッドコードでのスクワット姿勢
レッドコード上のスクワット姿勢から両脚を開脚し、開脚をキープしたまま体幹の回旋を行います。

 今回はアーリーコッキング期の姿勢についてお話しさせて頂きました。このフェーズでの不良姿勢は様々なバリエーションがあります。このフェーズでの不良姿勢がレイトコッキング期からアクセレレーション期での身体の開きや肘下がりに繋がってしまう事が多くあります。このフェーズでの不良姿勢は、正確なスクワットが行えなかったり、内転筋の筋力低下や体幹の可動域等様々あります。ボールを投げるための準備段階としてとても重要なフェーズとなります。自分のフォームがしっくりきていない選手や、投げる時に痛みが出る選手はフォームを見直してみるのもいいかもしれません!

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